統合型リゾート
Integrated Resorts

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日本におけるIR誘致分析:大阪と長崎における誘致理由の違い

この研究は、国内統計データを使用し、日本国内初のカジノ開業という方針のもとに進められている統合型リゾート(以下IR)事業に対する興味と関心を明らかにする目的で行っています。我々は大阪府と長崎県がIR誘致への認定申請を行なった理由に着目しながら、その他の都道府県においてもIR誘致の機会がどういったところにあるのかを紐解いていきます。

統合型カジノリゾート計画方針の現在の状況について:日本政府は国内外観光産業を今後さらに拡大させていこうという方針のもとでこの計画を推進しています。現段階では、長崎県と大阪府、ふたつの府県が申請を行いました。

日本の観光事業へIRが与える影響

まずは述べておきたいのは、日本ではコロナウイルスのパンデミックにより水際対策として観光客の入国を禁止していましたが、現在ではその規制を解除しつつあり、観光産業復興を計画している段階にあるということです。こういった流れもあり、2022年6月、国土交通大臣である斉藤鉄夫氏は経済政策文書を発行しました。ここには2030年までにインバウンド観光客を6000万人迎え入れる目標が掲げられ、目標を着実に達成するための活動計画が36ページに渡って記されています

日本政府はカジノリゾート方針をこの計画の一部として捉えています。2022年4月の申請期限までに申請を行なったのは大阪府と長崎県の二府県のみでしたが、今年の秋までに他の都道府県から申請が行われる可能性もまだ残っています。

この研究に関するデータのクロス集計

現在までに、カジノが観光客にとって魅力的なアトラクションになると示した国内統計データが存在していないとすると、生活に密着している他の娯楽に関するデータを用い分析を行うことでIRが成功(または失敗)する可能性がどういったところにあるのか評価できると言えるでしょう。

今回は、パチンコ店舗数、パチンコプレイヤー人数(25歳以上)、ゲームセンター数、そしてインターネット普及率を取り上げ、相関関係を分析します。

また、コロナウイルスのパンデミック前の日本における国際観光産業の統計データを用い、どういった取り組みができるのかも精査していきます。

パチンコ店舗数

ここでは日本で10万人あたりのパチンコ店舗数がもっとも多い都道府県、もっとも少ない都道府県を取り上げます。(表では上位と下位の五都道府県のみを紹介しています。お問い合せに応じて、使用したデータを提供いたします)

まとめ

IR誘致申請をしている府県のひとつである長崎県は、10万人あたりのパチンコ店舗数が14.41となっており、上位五県のうちの5位に位置しています。

もうひとつのIR誘致申請をしている府県である大阪府は、10万人あたりのパチンコ店舗数が11.28と全体では21位となっています。

他の興味深い点:

  • 鹿児島県と高知県は10万人あたりの店舗数が17.87と15.37となっており、上位二位に入っています。
  • 東京都(47都道府県中45位)と沖縄県(最下位)は下位三位に位置しています。
  • 下位五位に入っている都府県の10万人あたりのパチンコ店舗数の数は、鹿児島の半数にも達していません。

上位五位

順位 都道府県名 パチンコ店
金額 100000あたり
1 鹿児島県 245軒 17.87
2 高知県 95軒 15.37
3 鳥取県 73軒 15.18
4 宮崎県 139軒 15.17
5 長崎県 166軒 14.41

下位五位

順位

都道府県名

パチンコ店

金額

100000あたり

43

京都府

185軒

8.35

44

奈良県

92軒

8.01

45

京都東

934軒

7.95

46

神奈川県

588軒

7.59

47

沖縄県

82軒

7.19


データソース:http://www.bohan.or.jp/

パチンコプレイヤー数(25歳以上)

ここでは日本で100人あたりにおける平均パチンコプレイヤー数(25歳以上)がもっとも多い都道府県、もっとも少ない都道府県を取り上げます。(表では上位と下位の五都道府県のみを紹介しています。お問い合せに応じて、使用したデータを提供いたします)

まとめ

長崎県の100人あたりにおける平均パチンコプレイヤー数(25歳以上)は10.9人と12位に位置しています。

大阪府の100人あたりにおける平均パチンコプレイヤー数(25歳以上)は9.11人と33位に位置しています。

他の興味深い点:

  • 10万人あたりのパチンコ店舗数で1位になっている鹿児島県の平均パチンコプレイヤー人数は2位となっています。
  • 東京都(47都道府県中46位)と沖縄県(最下位)は下位三位に位置しています。
  • 10万人あたりに対するパチンコ店舗数においても東京都と沖縄県は下位三位に位置しています。

上位五位

順位

都道府県名

パチンコ遊技者(25歳以上)

100あたり

1

熊本県

185,000人

13.44

2

鹿児島県

169,000人

13.21

3

宮崎県

112,000人

13.1

4

福井県

77,000人

12.71

5

石川県

107,000人

12.04

下位五位

順位

都道府県名

パチンコ遊技者(25歳以上)

100あたり

43

埼玉県

443,000人

7.85

44

神奈川県

509,000人

7.19

45

奈良県

73,000人

6.92

46

東京都

575,000人

5.37

47

沖縄県

40,000人

3.86

ゲームセンター数

ここでは日本で10万人あたりのゲームセンター数がもっとも多い都道府県、もっとも少ない都道府県を取り上げます。(表では上位と下位の五都道府県のみを紹介しています。お問い合せに応じて、使用したデータを提供いたします)

まとめ

長崎県における10万人あたりに対するゲームセンター数は1.8と、33位に位置しています。

大阪府における10万人あたりに対するゲームセンター数は2.26と、25位に位置しています。

他の興味深い点:

  • 東京都(1位)と沖縄県(2位)は上位三位に入っています。
  • 東京都と沖縄県はどちらも、10万人あたりに対するパチンコ店舗数と100人あたりにおける平均パチンコプレイヤー数(25歳以上)では下位三位に位置していました。
  • 鹿児島県は36位となっていますが、10万人あたりに対するパチンコ店舗数と100人あたりにおける平均パチンコプレイヤー数(25歳以上)では上位三位に入っていました。

上位五位

順位

都道府県名

ビデオアーカイブス

100000あたり

1

沖縄県

135軒

9.5

2

東京都

509軒

3.8

3

栃木県

67軒

3.38

4

和歌山県

32軒

3.3

5

石川県

37軒

3.2

下位五位

順位

都道府県名

ビデオアーカイブス

100000あたり

43

山梨県

11軒

1.31

44

島根県

9軒

1.29

45

岩手県

16軒

1.25

46

奈良県

14軒

1.02

47

秋田県

10軒

0.96

データソースhttp://www.bohan.or.jp/

インターネット普及率

ここでは日本でインターネット普及率(%)がもっとも多い都道府県、もっとも少ない都道府県を取り上げます。(表では上位と下位の五都道府県のみを紹介しています。お問い合せに応じて、使用したデータを提供いたします)

まとめ

長崎県のインターネット普及率は67.9%で、38位に位置しています。

大阪府のインターネット普及率は79.55%で、5位に位置しています。

他の興味深い点:

  • 東京都は85.1%ともっとも高いインターネット普及率を誇っています。
  • 10万人あたりのパチンコ店舗数では上位五位に入っていた高知県(64.5%)と鹿児島県(64.85%)の両県は、下位四位に入っています。

上位五位

順位

都道府県名

インターネット普及率

1

東京都

85.10%

2

神奈川県

81.75%

3

埼玉県

81.70%

4

愛知県

80.50%

5

大阪府

79.55%

下位五位

順位

都道府県名

インターネット普及率

43

青森県

65.10%

44

鹿児島県

64.85%

45

秋田県

64.50%

45

高知県

64.50%

47

岩手県

64.45%

外国人観光客に多く訪問されている都道府県

ここでは外国人観光客の訪問率をベースにして、外国人観光客の訪問率が多い都道府県を取り上げます。なお、このデータはコロナウイルスのパンデミック前に集計された情報を元に作成されたものです。紹介されているのは上位十都道府県だけとなりますので、ご了承ください。

まとめ

長崎県は1.3%の外国人旅行客の訪問があり、23位に位置しています。

大阪府は33.4%の外国人旅行客の訪問があり、3位に位置しています。

データソース Statista

データから示されること

データ分析の結果から、いくつかの興味深いポイントが見つかりました。


  • 東京のように規模が大きく、都会化が進んでいる都市においては、既存の娯楽に囚われているような様子はあまり見受けられません。パチンコのような昔からある娯楽への興味よりも、その関心はインターネットやTVゲームといったより新しい技術を使用しているものに遷移していると言えます。大都市圏に居住する人の平均年齢が日本全体の中でもっとも低いという事実にも関連しているのでしょう。


  • 対して、インターネット普及率が低く、TVゲームにあまり興味を示さない鹿児島県や高知県といった場所では、順位から見ても明らかなように、パチンコといった昔からある娯楽に対して高い関心を示しています。

長崎県と大阪府がIR誘致申請をした理由について

長崎県と大阪府それぞれのIR誘致に対する考え方の違いを、分析結果から明らかにすることができます。

長崎県

長崎は既存の考え方に沿ってIR誘致申請をしています。パチンコ店舗数(4位)やパチンコプレイヤー数(12位)では上位に位置していることから、(パチンコを確実な指針と設定すると)県内のギャンブルに対する関心は国内においても高いものだと言えるでしょう。

そして、外国人観光客の訪問率が低くなっているため(1.3%)、IRには国内からの観光客を呼び込むことも目的にしているように考えられます。

一方で、長崎県独自が策定した長崎IR構想骨子(PDFダウンロード)によると、長崎県観光振興条例が制定されており、そこでは観光立県になる目的が謳われています。

そこでは、このように述べられています。
「IRの導入は、全国有数の観光地である長崎県の魅力をさらに引き上げ、県内のみならず九州の観光振興の起爆剤となります。

長崎県は、(1)アジアとの近接性、(2)国際的にメッセージ性の高い観光資源、(3)ハウステンボスとの相乗効果、(4)行政、議会、民間の連携、(5)九州広域の多様な観光資源との連携などの高いポテンシャルを有しており、地方創生型IRの最適地と言えます。」(以上「長崎IR構想骨子」より抜粋)

以上からわかるように、この骨子では、東アジアの国際観光産業と地域の再活性化が、近隣地域における観光産業の重要な課題になっていることが強調されています。

総論:長崎県におけるIR誘致の主な目的として、構想骨子では外国人観光客の呼び込みが最初に挙げられていますが、データを鑑みると開業後数年は近隣在住者と日本人観光客の訪問を頼らざるを得ないと推測されます。

大阪府

大阪府は、従来とは違う考え方を持ってIR誘致申請を進めています。大阪府は外国人観光客の訪問者数のうち1/3(33.4%)が訪れている場所であり、大阪府が掲げる主な構想は、外国人観光客が日本に滞在している間にIRで充実した時間を過ごすために誘致する、というものです。

大阪府はインターネット普及率も高く(5位)、国内での平均年齢を比較しても、平均年齢がもっとも低い場所のひとつです。大阪府は今の時代潮流に身近に触れられる、若く活気にあふれた場所なのでしょう。ギャンブルに一定の関心を示している年齢層もいますが、パチンコの人気が高い保守的な県における関心とはまた異なる形への興味と言えます。